潰れた檸檬

自傷しなくても傷だらけ

ストレート

 私は今就活をしている。その際に、人事からよく聞かされる言葉がある。

 

「素直な人が欲しいです。」

 

 これほどまでに簡素で、分かりにくい言葉はあるだろうか━━━━━━━━

 

 私は、昔から「ひねくれている」「尖っている」と言われる部類の人間であった。発言に人を不快にさせる要素があるらしい。しかし、冗談が通じる場面以外で不快にさせる発言をする意図はない。そういうのは大抵面白くない上に、人の気分を害するので効率が悪い。だから不快にさせる発言をしているとしたら、得られる結果のために少々の感情の犠牲を伴わなければならないシーンということになる。

 

 つまり、思ったことをそのまま言ったら相手が(勝手に)不快になったのである。ただ思ったことをそのまま言うにしても、誰も得しない発言はしない。お互いの今後のために、少々キツいかもしれないが絶対に伝えなければならないことというのが「不快にさせる」らしい。

 

 主にこういう発言をする相手は決まっている。会話に対して相応の理解力を持っていて、かつ関係性が続くであろう相手のみだ。言わば、私が期待している相手である。だから本音で話すし、そこで言い争いになってもいいと思っている。関係性が続くなら価値観はいずれぶつかるし、そういうのなら最初に処理した方が効率が良い。

 

 しかしなかなかこの想いが通じることがなかった。特に親は難解だった。親は、戸籍上末永く続くものだから合わせに行くとお互い限界を迎える。つまり本音で話すことによって、また新たな関係性に到達せねばならない。言わばそれが親子の目標である。だから本音で話すし、お互いの合意点が取れるまで納得のいくまで話し合うつもりである。これが理想だが、大抵の場合途中でその理想は崩れる。思ったことを言っただけなのに「もうちょっと素直になったら?」と言ってくるのだ。

 

 むしろ、言い争いになる時点である程度素直に話している。わざわざ引き金引いて議論するのは冗談以外ではそこまで好きではない。素直に話して言い争いにならなかったら、快いコミュニケーションだがそうでなかったら単純に価値観の違いとなる。

 

 では、ここで素直の定義について確認してみよう。

https://kotobank.jp/word/%E7%B4%A0%E7%9B%B4-542751

 親は2の意味で「素直」を捉えている。しかし、私は1の意味で「素直」を捉えていた。ここであることに気づく。親は、単純に自分が言ってることに対して息子が聞き入れないのが不愉快なだけだと。しょーもない感情のために1人の人間が犠牲になっているのだと。もし2の意味で素直を用いるのなら、素直になりなさいではなく「従順であれ」と言うのが適切である。こんな日本語のミスをしているにも関わらずある程度の社会的地位が得られているのが不思議だが素直を調べて大辞林には両方の意味が記載されている以上、どっちも用法としてはアリなのだ。だから素直という言葉を使う際には、必ず定義を確認しなければならない。少なくともこの記事を読んだ方は意識を変えてみるのもいいかもしれない。

 

  ここで1つ私の解釈を挟む。1は、主観的な意味で、2が客観的な意味だと考えている。2の意味で素直を使う人は、言い方悪いが集団生活に染った人であろう。1は自分に対して、2は相手に対してストレートだ。

 

 親との言い争いの時に、素直じゃないのはむしろ親の場合が多い。私はストレートに話しているだけなのに、それに対して「ひねくれている」と解釈するのはむしろそっちの方がひねくれているのではないか?意図的に発した言葉に対して、意図的ではなくただの反発だと捉える手法そのものが邪道である。このケースは、例えを親にしたがリアルでもかなりの確率で起こっている。その度に思うことを、今日この記事でまとめた。

 

 就活の際に人事が素直という言葉を使いだしたら、彼らが自ら言わない限りは必ず定義を確認するようにしている。そして、2の意味で使いだしたら私にとってはいらない会社...としている。

 

 ただ一般的な人間は、集団生活の中に溶け込んだ上で言葉を選んで使っている。私自身あまり集団生活をしていなかったので、言葉の解釈がズレやすい。でも日本がダイバーシティを目指しているからこそ、身近な言葉の定義について調べる必要がある。そして、もしコミュニケーションをしっかり取るならお互いの解釈を一致させなければならない。

 

 思ったことをそのまま言ってひねくれているという解釈をされるうちは、私の幸せは訪れない。ストレートに何かを言えるポジションになったり、理解してもらうなりしないとダメだ。もっと言葉の意味を考えてみる文化が広まって欲しいものよ。

 

〈追記〉

「ぬいぐるみからペニスと蛙化現象について」は、参考文献を用いて調べる必要性があったことと、自宅から片道1時間半の大学に資料を取りに行くのがダルいという理由で更新が滞っています。多分2ヶ月以内にかけると思います。先にこれを書いてしまったので悪しからず。