潰れた檸檬

自傷しなくても傷だらけ

M・A

中高の同期とはほとんど切った。というのは冒険処女を見ている人にとってはもう当たり前なのだけど、別に会いたい人だっている。今回は、会いたい同期である。

 

Aも前回書いたI・T(http://dangosakashita.hatenablog.com/entry/2017/10/26/214053)同様に、中学から高校に上がる際に内部進学を選ばなかった、というより選べなかった同期である。こちらは、成績不良すぎて上に上がれなかったパターンである。彼は別の高校に進学したのだが、彼が最終的に進学した短大よりは内部進学を貫いた方が(学歴差別するつもりもないけど)良い大学には行けたのだ。

 

Aは根っからの変わり者だった。Aは毎回のように忘れ物をした。また物もよく紛失する。そして、成績はほぼ毎回学年最下位だった。また「落ちているものなら使ってもいい」という謎ルールがあるためか私がなくしたと思ったシャープペンシルを(多分私のとは知らず)使っていた。その時は衝撃を受けたが別に無料のノベルティグッズだから所有権を主張できないとして譲った。

 

ここまで書くとただのダメなやつかもしれない。だが彼は天才の側面もあった。彼はレゴの世界大会で上位に入った。そのため全校生徒の前で表彰されたり会報に載ったりした。またポケモンも強い。そんな才能があるにも関わらず上記のような雑さがあるため、「Aちゃんは学校の誇りだしホコリだ」と言われるまでにあった。

 

出身校は「成績の悪い奴(=先生の言うことに従わない奴)はいじめてもいい」みたいな風潮が流れていた。だからAはいじめまではいかないけど周囲からバカいじりをされた。先生も生徒もバカいじりをした。だが彼はレゴなどで結果を残している。つまり、個性を尊重しない私立中高一貫というクソみたいな学校において彼はたまたま相性が合わなかったのだ。彼は内部進学しなくて正解だったかもしれない。

 

そんな彼と3年後に再会するのである。予備校がたまたま一緒だった。見かけたので声をかけた。そして一時期は彼と一緒に食事に行ったりした。学校という、個性だの人物など謳っておいて結局成績でしか人を見ないクソ組織の外で会う彼は面白かった(ただ彼はちょっと頭が悪いから会話がしんどかったけど...)。もし彼と仲良くなれたらお互い心の支えになれたんじゃないのかなとも思った。

 

私は夏から秋にかけて予備校の校舎を変更したことによって彼との関係は自然解消した。彼は当たり前だけどそのままその予備校に残り続けた。が、私が校舎を変える前に飯を食いに行った時こんなことを話していた。

 

「これ見てよ。このAOだったら俺でも行けるよね!だって外部で結果残してるし!」

 

いやまあそうだし否定するつもりは無いけど、お前早稲田行きたかったんじゃないの?ていうかその条件だったら予備校で浪人する意味もないじゃないか...とは言ったものの彼の耳に入らなかった。結局彼はそこの短大にAOで合格して進学した。

 

大袈裟だけど、あの出身校が彼のモチベや自尊心というものをぶっ壊しにかかったんじゃなかろうか。と、少しは考えたが果たして杞憂なのだろうか。

 

***

 

私は別に思い出に浸るタイプではない。Aと再会して「いや〜あの時のお前はこうだったよな~!」とか言いたいわけでもない。むしろ、中学で彼と同じクラスになったのは2年間しかないしつるんでるグループが異なるため交わりがない。

 

じゃあなぜ彼に会いたいのか?それは、私が彼の魅力に気づいたからである。私は出身校が非常に嫌いだけど半分洗脳されていて、彼がああなるのも自分で決めた道だから仕方ないと思っていた。でも違った。彼は彼なりのオリジナリティ溢れる世界観を持っていて、それに我々は気づくことがなかっただけだったのだ。彼がどういう視点から世界を見ているのか興味が出てきた。それともう1つ、私があの学校に対して抱いた違和感が共有出来るのではないかと思った。傷の舐め合いに見えるかもしれないが、おかしいと思ったことをおかしいと言える感性が干からびてしまいそうで怖いのだ。そういう意味で彼に会いたいのだが、アポとってまで会いたいとは思わない。ストレートに学生生活が進むのであれば彼は今社会人である。また私が恥をかくだけだ。という風に思っている以上会ったところで楽しめない。ていうか普通にめんどくさい。いつか、本能が訴えかけるまで待つことにする。それは、私が編み出したオリジナリティなのである。