潰れた檸檬

自傷しなくても傷だらけ

I・T

中3の時に席が隣だったことから仲良くなった同期のイニシャルである。 

 

彼との出会いはよく覚えていない。中二の時に同期の紹介で知り合った程度だろうか。そんな彼と中三の時に同じクラスで、しかも隣だったことから話すようになる。

 

共通の興味が鉄道だったこともあってすぐに仲良くなり、学校以外でも遊んだ。彼は酷く下品な男だった。コンビニ出たところで立ちながらおにぎりを食べ、それを昼食にしようと言い出したのでファミレスで奢ってやるからそんな汚い真似は辞めてくれとせがんで事なきを得た。それ以外にも、学校の至る所に彼独自のイニシャルを書いたり、自分の容姿のことを嘲笑ったりする、俗に言う下品な仲良し友達だった。自分の中では。

 

彼は中学から高校に上がる時に、彼は教員とソリが合わないことを理由に内部進学せずに出ていってしまった。

 

そんなことよりも、彼は違う高校に行くということを自分にすら話さなかったことの方が辛かった。一番近い距離にいたと勘違いしたのは自分だけだった。そして彼はそんなことを話すこともなく、10月の忙しい時期に遊びに誘ったのだ。高校生になる前に教員が彼が他の学校に行くことをみんなの前で言った時に彼に訊いてみた。

「俺お前にそのこと話したはずだけど?」

とぼけんな。明らかに嘘をついている。高校に進学する書類を彼が締切まで持ってこなかったことを自分が強く追及した時彼は「大丈夫」としか答えなかったからだ。お前その頃から他の高校に行く気だったのかって。この時強く思った。「信頼されてないんだな」って。結局、彼がいてもいなくても自分は孤独なんだなって。

 

それでも彼の存在を欲している部分はあったと思う。彼がいない高校生活はつまらなかった。成績は底辺の問題児だったため教員や学生からも嫌われ続けた高校生活は最後まで台無しに終わった。だから彼がもしあの時いたらなと考える。もちろん自分の生活の楽しさを人に委ねてはいけないしそうするつもりはない。だが中高一貫の人間は中学からの繋がりを大切にする以上、中学からやらかしてきた自分の最低限の立場というものが高校にはなかった。

 

内心が腐ったまま時間が過ぎていき、彼と連絡を取り高二の冬に再会することとなる。

 

彼は賢くなっていた。もう下品な彼はない。金のことぐらいか。なんでも入院中に読書をしまくったのこと。そして他の高校に行った彼は自分、ひいては同期の誰よりも成長していた。成長していなかった自分はその時に当時好きだった女の子の話をした。「騙されてんじゃないの?」と彼は言い放った。そんなことは無いと一応抵抗したが、結局その子とは疎遠になった。おいT、お前の言ったことは正しかったぞ。

 

彼とは今は疎遠状態である。連絡先も持っているが今日に至るまで存在を忘れていた。確か自分が浪人を決めた時に会おうという話になったが浪人だからという理由で断った。それ以降大学に受かっても会おうという気にはならないし、結局自分の中でも彼はその程度の存在でしかなかったのだろう。

 

部活一緒じゃなくても学校の外でも会おうという気になってこその「学校の友達」である。彼を最後に学校の友達という概念が途絶えた。今も少しだけそういうのを求めている。Twitterを経由しないでリアルで分かり合える人が見つかったら、多分自分はリアルでも存在を認められていることになる。最近妙に強くなってきている承認欲求の正体はこれかもね。